「作業分解票の作成」
作業分解票は作業手順をまとめるための定式書類です。
主にコツや注意点を具体化するために作られます。
今回は、その作業分解票の作成手順について学んでいきます。
1)作業分解票とは
作業分解票は、主に作業が要求される指導で、作業手順を細かく文章化し、急所(ここに注意すればうまくいくという、注意点のこと)を見つけ出すために作られます。
また教員用の資料として指導中に使うことがあるほか、配布教材としてそのまま学習者に配布することもあります。
その形式は様々ですが、ここではステップ、作業手順、急所とその理由からなる定式書類を用いていきます。
具体例を以下に示します。
作業分解票 チップ抵抗のはんだ付け |
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ステップ | 作業手順 | 急所とその理由 |
構える | 1.パターン面を上にして、基盤支持台に基盤を取り付ける | 1.基盤支持台の突起を四隅の穴にきちんと合わせる(作業中に基盤がずれないように |
仮はんだ付け | 1.取り付けるランドの片側に予備はんだ付けをする 2.チップ抵抗をピンセットで指定位置に置く 3.はんだごてのこて先をランドと抵抗電極部分に当てて加熱し、仮はんだ付けをする 4.チップ抵抗のずれを確認する |
1.はんだは薄く(余分なはんだを消費しないように はんだはチップ用ランドからはみ出ないよう(余分なはんだを消費しないように。ランド間でショートしないように。見栄えをよくするため 2.チップ抵抗の位置はランドに対して縦横共に中心に(導通するように。他のランド・部品とショートしないように。見栄えをよくするため 3.ピンセットでチップ抵抗を抑えながら(チップ抵抗がランドに対して浮かないように。位置がずれないように。見栄えをよくするため 加熱は平均的に(きちんと導通するように。部品を壊さないように 4.ずれている場合はランドと抵抗電極部分を加熱しながらピンセットで位置を修正する(導通するように。他のランド・部品とショートしないように。見栄えをよくするため |
はんだ付け | 1.仮はんだ付けした部分の反対側のランドと抵抗電極部分を加熱し、はんだを流し込む 2.仮はんだ付けした部分のランドと抵抗電極部分を加熱し、はんだを流し込む |
1.ランドと抵抗電極部分が温まってからはんだを流し込む(はんだとランド・電極部分がきちんと導通するように はんだの形が角がなく、すそをひくようにする(余分なはんだを消費しないように。見栄えよくするため はんだはチップ抵抗の電極部分の側面を完全に覆うように、ランド部分を完全に埋めるようにする(きちんと導通するように。見栄え はんだはチップ用ランドからはみ出ないよう(余分なはんだを消費しないように。ランド間でショートしないように。見栄えをよくするため 2.同上 |
仕上げ | 1.はんだの量、形を調整する | 1.はんだの形が角がなく、すそをひくようにする(余分なはんだを消費しないように。見栄えをよくするため はんだはチップ抵抗の電極部分の側面を完全に覆うように、ランド部分を完全に埋めるようにする(きちんと導通するように。見栄え はんだはチップ用ランドからはみ出ないよう(余分なはんだを消費しないように。ランド間でショートしないように。見栄えをよくするため はんだの表面に光沢があるようにする(フラックスによる錆防止。ない場合は新しいはんだを適量流し込む |
2)段階としての「作業分解票の作成」
作業分解票は前述したとおり以下の目的で作成されます。
□教材研究として
・作業手順を文章として具体化する
・急所を導き出す
□教材として
・配布教材に用いる
・教員が学習指導を進めるための資料に用いる
特に作業が重要な要素を占める学習指導では、一度は作業分解票を作成しておいた方が無難です。
作業分解票を作成しない場合:
■作業手順・急所を具体的に把握しておく必要がある。
■作業が主体の学習指導では、最初は簡略化しないほうが良い。
3)作業分解票の作成手順
作業分解票の作成は「ステップの抽出」「手順の抽出」「手順の急所の抽出」「急所の理由の抽出」からなります。
設定する順番に特に指定はありませんが、「ステップ→手順→急所→理由」という手順で作成するのがやりやすいと思います。
(ただし手順を洗い出してからステップに分類するなど、順番は便宜に合わせて変えてもかまいません)
具体例とともに説明していきます。
1. ステップへの分類
実演、シミュレーション、文献などで得た情報からステップに分解します。
例)作業「束線板の作成」
ステップ
1準備
2釘打ち
3仕上げ
2. 手順の抽出
各ステップを手順に分解していきます。
なお手順を洗い出す過程でも、必要であればステップの追加・統合を行います。
1準備
(1)束線図を束線板上に広げる
2釘打ち
(1)指定位置に釘を立てる
(2)釘を打ち込む
3仕上げ
(1)釘の高さを調整する
(2)釘の強度を確認する
3. 急所とその理由の抽出
各手順を行うにあたっての注意点、コツ、基準などを洗い出し、さらにそれがなぜ必要かという理由を書いていきます。
1準備
(1)束線図を束線板上に広げる
・大きな皺、歪みがないか確認(正しい位置に釘を打ち込めるように
2釘打ち
(1)指定位置に釘を立てる
・釘は位置が右→左、下→上の順番で打ち込んでいく(打ち込んだ釘が次からの打ち込みの邪魔にならないように
・釘は中間部分を人差し指・中指と親指ではさむ(多いと指を打つ、挟む危険がある。少ないと釘が不安定になる
・向こう側に少し倒した状態で指定位置に設置する(先端が見えやすいように
(2)釘を打ち込む
・ハンマーは頭部より5cm程度先の部分から持つ(正確に釘を打てるように。強く打ち込む必要はない
・釘は3回程度の打撃で1cm打ち込む(横に曲がらないように。最小限の力ですばやくできるように。3回でできない場合は、ハンマーを遠く持つようにする
・釘は垂直に立てて、垂直に打ち込む(横に曲がった場合はハンマーの横部分で調整する
3仕上げ
(1)釘の高さを調整する
・打ち込みがたりないものを打ち込む(束線作業がしやすくなるように
・全体的に軽く打ち込む(高さを合わせるため。束線作業がしやすくなるように
(2)釘の強度を確認する
・軽く釘を触れて強度を確認する(束線作業中に釘が外れないように。強く押すと返って釘を不安定にする恐れがある。強度の足りない釘は更に打ち込む
なおこうした分解作業は作業以外(例えば解の導出過程、データの分析過程)等にも適用できます。
4)まとめ
■作業分解票は、作業手順や急所の具体化と、教員・学習者のための教材作成を目的として作られる。
■作業分解票はステップ、作業手順、急所とその理由からなる。
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