「教材研究」
言うまでもなく、教員は教える内容を熟知しておかなければなりません。
教員が教える内容について情報を収集する段階、それが「教材研究」です。
今回は教材研究について、そのやり方を中心に簡単に学んでいきます。
1)段階としての「教材研究」
「教材研究」は、教員が教える内容について情報収集し、それらを学習指導に適切に導入できるように編集していく段階です。
自ら教える内容に理解を深めたり、適切な学習方法を見極めたりするために実施します。
2)情報の収集
情報を収集する手段として代表的なものに以下の4つがあります。
1. 文献研究
教科書、論文、本、統計資料、過去の学習指導案といった、文献資料からデータを収集します。
収集元の選定には、教科書に従って授業を進めているのなら教科書中心に、指導目標で特定の問題集を解く事を求めているならその問題集を中心に、と学習指導の方向性を反映させると良いでしょう。
2. フィールドワーク
著者、関係者、他の教員などから情報を聞いたり、生産場所、研究施設などで情報を収集したりします。
また地層、動植物の実地観察といった、学習対象となっている場所を訪ねて情報を収集します。
3. 実験研究
教員自ら実験を行い、事実の裏づけや情報の収集を行います。
また室温の変化、用量のミスといった想定される外乱がどのように結果に影響を及ぼすか確認します。
4. 作業研究
教員自ら実演してみて、コツ、感覚、留意点等の情報を収集します。
また実演して必要な技能を修得します。
ちなみに、作業研究は次の回で説明する作業分解票を作成する過程で進めていきます。
なお、ねらいでの本基準に関する情報を集めておくと(例えば高校物理ならセンター入試の問題を集めてみる)、学習指導の目的と内容を一致させやすくなります。
3) 情報の最適化
情報の最適化の方法は人それぞれ、種類も千差万別ですが、ここでは代表的な4つの手法を挙げます。
1. 必要項目を抽出し、明確化する
やり方、概念、考え方、情報が表しているものなどを、簡潔な文章で具体的に表現していきます。
具体的には、人口に関する統計資料に「これは少子高齢化を表している」と読み取るべき要素を示したり、式の羅列に「ここでは解の公式を用いて二次方程式を解く手順を示している」「ここでは解の確認手順を示している」と意味づけを行ったりします。
2. 構造化、体系化する
複雑な事柄を分かりかすく説明できる構造・体系を見つけ出します。
また図表を活用して複雑な事柄をまとめていきます。
3. パターンを見つけ出す
様々な事柄に適用できるパターンや共通点を見つけ出します。
またフローチャートなどの図表で、パターンをまとめていきます。
4. 具体化する
分かりにくいもの、概念的なものを具体的な事柄で分かりやすくします。
例えば、足し算を指の数で表したり、分数をピザの分け方で表したりします。
4) 手がかり
学習指導で指導目標を達成させるために学習者に提示する情報を「手がかり」と言いますが、その手がかりの抽出も教材研究の目的の一つです。
「手がかり」の項目は指導目標を達成するのに最低限必要な項目を全て押さえておく必要があります。
なお手がかりの形は「『〜である』(と言う)」「〜であると示す」のように、実際に指導する形式の文章で表すと指導案に組み込みやすくなります。
具体例を示します。
指導目標:
「地図上の国家を見て、海洋国か内陸国か判断することができる」
手がかり:
「海洋国とは、国土の周囲が海で囲まれている国の事である」
「内陸国とは、国土が海に全く接していない国の事である」
手がかりとして不適切な例:
「少しでも国土が海に接していると海洋国ではない」
(×:一番目の手がかりと重複する。冗長な項目。
「日本は海洋国である」
(×:他に適用できる情報でない。冗長な項目。
なお興味を引き立てるための余談、理解を深めるための他の例の紹介など、学習指導を進めるにあたって必要な冗長性がある事も確かですが、それらは学習指導案を作成する段階で作成し、組み込んでいきます。
手がかりはあくまで必要最低限かつ必要なもの全て、を原則とします。
ちなみに、手がかりは学習者が学ばなければならない情報全てを表しているため、その数や難解度は学習指導の難易度を推し量る目安となります。
5)まとめ
■教材研究は情報収集と情報の最適化からなる。
□情報収集法の例
・文献研究
・フィールドワーク
・実験研究
・作業研究
□情報の最適化法の例
・必要項目を抽出し、明確化する
・構造化、体系化する
・パターンを見つけ出す
・具体化する
■教材研究の段階では、手がかりを明らかにする。
手がかりは、学習者が指導目標を達成するのに必要な必要最低限の情報をまとめたものである。
back