「指導観察」
指導観察は、学習指導の観察・評価する行為のことをいいます。
今回は指導観察において具体的にどのような項目を見るのか学んでいきます。
1)指導観察とは
指導観察とは、学習指導の改善・向上のために、他者の学習指導を観察してその評価を行う行為のことを指します。
指導観察の目的として、次の3つが挙げられます。
1. 自分の行っている学習指導を、第3者の目を通して客観的につかみ、改善点を見つけ出すため
2. 他人が行っている学習指導を具体的な評価基準を元に分析して、参考になる要素を見つけ出すため
3. 複数の学習指導を客観的にに比較・検討して、コツ・長所短所等を見つけ出すため
2)指導観察の視点
指導観察は、主に評価項目を具体的にまとめた指導観察用紙を用いて進めていくことになります。
ひとまず指導観察用紙の一例を以下に示します。
授業者氏名 | 山田 太郎 | 評価者氏名 | 山田 花子 | |
授業実施日 | H17年1月14日 | 授業題目 | JISに基づく製図記号 | |
訓練課程 | 短期過程・電子工学科1年 | 訓練生数等 | 20名 |
観察要点 | 観察細目 | 評点 | 批評 | |
用意 | 指導案 作業指導票 教材・教具 |
C B A |
時間不足で、十分に計画されていないように見える。配布教材が充実しており、効率的に使われている。 | |
訓練生 | 服装、態度 熱意 興味 理解 質問 |
A A A A B |
指定した実習服を着用している。 指導員の話をきちんと聞き、積極的に実習課題に取り組んでいる。 |
|
指導員 | 態度、服装 熱意 声量、速度 動作、くせ 訓練生把握 板書の方法、内容 教材等の利用法 |
A A C A C A A |
声が大きく、聞き取りやすい 後半話し方が大分早くなり、訓練生の理解が追いついていないようだった。 最後の課題でできていない組があったが、それを十分把握できていないように見えた |
|
指導の仕方 | 準備 (学習意欲) |
うちとけた雰囲気 既知程度を確かめる 興味の喚起 |
A B A |
動機付けがうまくできている。 |
説明 (実演) |
明瞭で適切か 一時に一事の方法 急所、安全 順序正しく 専門用語 能力適合 |
B C A A A A |
後半は急ぎがちになって大雑把になっているように見えた。 要点はうまくまとめて提示できていると思う。 冒頭の専門用語の説明は丁寧で分かりやすかった。 |
|
応用 (実習) |
誤りを直しているか 繰り返し練習させているか よく観察しているか |
A B B |
繰り返し行うようにと言った割に、十分な時間が与えられていない。 観察も不十分に見えた。 |
|
テスト | 訓練生の理解を確かめているか テストの適否 |
B B |
課題ができていない組への対応と、観察が不十分に見えた。 | |
総括 (討議批評) |
最後の総括をしているか 重要点の討議・批評 |
C C |
時間不足でまとめが十分に行われていなかった。 | |
総括 | 主な欠点 主な長所 学習の効果 |
B A B |
配分時間の検討が不十分。 教材が分かりやすい。 結果的には望まれる学習効果は身に付けられているようだった。 |
|
全般的講評 |
※指導案 授業が計画的に進められているか。授業が適切に体系化されているか、など
※作業指導票 実技課題などの作業手順を示した教材。主に職業訓練で使われる。用意していないならば評価しなくて良い
※質問 訓練生が質問しているか。質問の有無で訓練生の授業への参加度を推し量っている
※訓練生把握 訓練生をきちんと見ているか。訓練生の課題の進み具合といった反応に適切に対応できているか、など
※専門用語 難解な専門用語の説明はきちんとできているか
※能力適合 学習者の能力に合わせられているか
※テストの適否 課題の結果が達成基準を満たしているか。課題の結果によって学習効果を推し量っている
上の例での観察細目に示されている通り、指導観察の視点、すなわち指導観察でみるべき項目は、大体以下のようなものです。
□全体の評価
・指導目標は適切か
・学習者の指導目標を達成できているか
・指導は計画的か(時間配分、授業の構成など)
・準備は十分にできているか(教材など)
□ふるまいの評価
・指導員のふるまいは適切か(声の大きさ、スピードなど)
・学習者は授業に参加しているか(質問の態度、学習者の理解度など)
□学習効果の評価
・内容は適切か(急所や要点を抑えているか、など)
・理解しやすいか(専門用語の説明、教材の活用など)
・記憶に残りやすいか(まとめ、課題など)
(なお目上の先生に対して、指示なく上のような指導観察用紙で指導観察を行うのは失礼に当たるので、そのような場合では上の指導細目の視点を保ちつつ、学習指導に見られたヒント・ノウハウ・コツなどを箇条書きにまとめていくことで指導観察を行います)
3)まとめ
・指導観察は指導観察用紙を用いて行う。
back